東京新宿の京王百貨店の名物企画「駅弁大会」が今年も行われている。1月6日から22日までという17日間、二週間以上7階の催事フロアで行う大イベントだ。百貨店の催事のほとんどが一週間単位であることを考えるとこの長さは異例である。実は10年ほど前まで駅弁大会はほかの百貨店も力を入れていたが、多くは撤退し「元祖」だけが生き残っている。
都会の百貨店で駅弁大会を行っても地方で1000円で販売している駅弁は百貨店にもってきてもやはり1000円だ。つまり百貨店の儲けはない。
さらに地方で製造する駅弁をトラックや場合によっては航空機まで使って東京に持ってくる輸送経費が発生するが、その多くは百貨店負担である。まして売り切れとなれば買い取った百貨店のリスクになってしまう。
また京王百貨店では毎年「復刻駅弁」など他にはない企画を立てて話題作りをしたり、売り場で駅弁を製造して販売することも行っている。そのために地方から上京してもらうスタッフの旅費なども百貨店が多く負担している。こう考えると宝飾品やブランド品を中心に粗利が多い高額商品を主に扱っている百貨店が中途半端に駅弁大会を開いても、あまりメリットがないことがわかる。
それではどうして京王百貨店はこのイベントを成功させてきたのか。
駅弁大会とテレビなどでは紹介されるが正確には「有名駅弁と全国うまいもの大会」である。駅弁自体から利益は期待できない分、一緒に開催する「うまいもの大会」で地方の食品、菓子を販売しており、これは「物産展」として機能している。
そして何より集客力だ。駅弁大会開催中、この百貨店の入場者は一日10万人を越え、これはお歳暮サンデー並みの混雑となる。ほかの売り場への回遊が進めば「駅弁さまさま」ということになる。
重要なのは、「イベント期間を長くとっている」ことである。
広報部は特にテレビ局各社に働きかけ、この駅弁大会をできればイベント開催期間の前半に放送してもらうよう今年の目玉企画を訴える。毎年やっているイベントだからこそ常に新味を持たせることが欠かせない。「復刻駅弁」や今年のように「台湾の駅弁フェア」など話題作りが欠かせない。
イベントの前半にワイドショーなどでの放送が相次ぐと、後半は大いに集客が増えるわけでそれを含んでイベント期間を長くとっている。
コロナも峠を越え、今年の駅弁大会は久しぶりに「元祖」の面目躍如となった。