最近の将棋界では人工知能による棋譜の研究が進み、序盤で玉の守りを固めるよりもいきなり戦いを仕掛けるという戦法をとる棋士が増えているようだ。
戦法には流行りすたりがあるが、ひところ人気があったのが「穴熊」であった。
これは盤上の隅に玉を移動させ、守り駒だけでなく本来は攻めに使う駒まで守りに動員し、徹底的に守り抜き、相手の攻撃のスキを見つけて奇襲攻撃をかけるというのが基本戦術だ。
日本対コスタリカのW杯サッカーを見ていて、コスタリカの戦いはまさに「穴熊」だと思った。ほぼ全員で日本の攻撃を守る。守りに守り、少し攻め疲れた日本のスキに乗じて後半たった一本のシュートで見事に得点した。
専守防衛の作戦勝ちと言おうか。
前の試合でスペインに7点をとられたチームが、格上とみられる日本に勝つには専守防衛で失点を許さないことを第一義的に考えたという作戦勝ちだったように思う。
専守防衛はいま日本の防衛戦略を考えるときによく用いられる言葉でもある。
敵の攻撃基地を叩くことまで専守防衛の範囲に考えるかは議論の余地があるが、島国のこの国をいかにして守るか、簡単なことではない。領土を侵されないようにすることももちろんであるが貿易立国のこの国ではシーレーンの確保も専守防衛の範囲と認識すべきだ。
飛車というミサイルや、角という核兵器をちらつかせるような周辺国に対して、この国はすべての駒を動員して「穴熊」を守り抜かなければならない。