今回福井に来たのは新幹線開業前の開発の様子を見たかったのと、歴史的遺跡を目で確認すること、そして越美北線に乗っておきたかったのである。北陸新幹線延伸後は北陸線が第三セクターに移行されるため、第三セクター福井駅から出るJRの盲腸線という珍しい形となり、ますます存続が難しくなると思われる。乗るのはこれが最後のチャンスになると思ったのだ。
越美北線は福井駅と九頭竜湖間およそ52キロを結んでいるいわゆる盲腸線だ。かつて国鉄時代はたくさんの幹線とつながらない行きどまり、折り返しの盲腸線が多数あったが、利用者が少なく大半が廃止、あるいは第三セクターなどに経営を譲っている。
私は15歳から20年以上かけて旧国鉄全線を完乗したが,幹線は本数が多いから乗るのは難しいことではない。
盲腸線は一日数便しか走らないからそれに乗るためにわざわざ出かけて行くのが大変だった。例えば福島県喜多方と熱塩加納村を結んでいた国鉄日中線。私はNHK時代福島に勤務している時に乗ったのだが、朝一往復、夕方一往復だけだった。日中走らないくせに名前だけ日中線だったのだ。わずか数キロの盲腸線を走破するために泊りがけで行くのだから効率が悪い事甚だしい。
さて越美北線は、もともとは福井駅と岐阜県の美濃太田駅の間を結ぶ鉄道の一部として建設された。盲腸線になったのは理由があり、いつかはその先もつなぐ計画が達成できないから結果として盲腸線になるわけだ。先ほどの日中線も本来は山形県に抜けるはずだったのだ。「もうちょっとでつながるはずの盲腸線」というわけだ。
越美北線は福井県側はJRの路線として残っているが、岐阜県側の越美南線はJRからは長良川鉄道に経営が移行している。両県を結ぶ計画は果たせず国鉄時代は、国鉄バスが大野市から越美南線の美濃白鳥を結んでいた。現在は福井市と大野市間の都市間輸送や九頭竜湖方面への行楽路線となっている。
今日も始発の福井では高校生などでほぼ座席が埋まっていたが、越前大野を過ぎると乗客は数人だけとなり、終点九頭竜湖で降りたのは3人だった。
終点近くは上り勾配の長いトンネルで、山里奥深くに分け入った寂寥感を感じることができた。
本当はこの先バスを乗り継いで九頭竜湖も見たいが、そうすると引き返す列車がない。
今乗ってきた列車が10分後に折り返すのでこれに乗るしか手がない