チェックインの時、クリスマスを彩る巨大なツリーがホテルの玄関に飾られていたのに、翌朝チェックアウトの時には玄関に大きな門松が据え付けられていたことに感動したことがある。
ハウステンボスのホテルヨーロッパに泊まった時のことである。
前夜は花火が上がりクリスマスを祝うさまざまなイベントが夜遅くまで行われていたのに、翌朝は極めて日本的な光景であった。
外国人が少しずつ日本観光に戻ってきている。
彼らは日本の伝統文化、豊かな自然、醬油と味噌と酒の食を楽しみにやってくる。
振り袖を着て神社仏閣に行ったり、富士山を見たり、寿司やすき焼きを食べて日本の思い出を作ってゆく。
銀座通りでヴィトンやエルメスを買いあさる人もいるかもしれないが、それなら五番街でもシャンゼリゼでもオックスフォードストリートでもできることだ。
浅草や祇園や道頓堀でしか体験できない経験にこそ極東の島国に来た意味がある。
同時に、秋田や長野や佐賀でしかできない経験もこれからは世界に発信していかなければならない。なまはげや善光寺や有田焼を中心とする郷土の文化である。47の都道府県にはそれぞれ独特の文化や伝統があり、狭い面積の国に実に多様な歴史が育まれてきたことこそ知ってもらいたいのである。
例えば京都には清水焼から京セラが生まれ、仏壇金具から島津製作所が勃興し、西陣織からワコールができた。古都としての顔にハイテク先端技術やファッションをリードする顔があり、実は伝統と文化によって育まれたものが多いことを外国人に知ってもらいたいのだ。
残念ながらこれから日本は老大国の道を歩む。
しかし老大国には誇るべき伝統と文化があり、それがいつまでも輝きを失わないという矜持が大切である。