西村晃の伝言板
2025-07-13
2025-07-13
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良いサービスを受けると一生忘れないばかりか多くの人に話したくなる。
もう20年も前の感動体験、なんと今住んでいる群馬県の経験なのだ。
その日。私は高崎駅前のホテルでの講演のため東京から新幹線で高崎に向かった。
講演の講師らしく「ミラショーン」の紺のダブルのスーツといういで立ちだった。
ところが、新幹線の中で前のボタンをどこかで落としてきたことに気が付く、
ダブルのスーツでボタンがなく前が開いたままでは格好が悪い。ミラショーンは特注の貝ボタンでどこにでもあるものではない。
ネットで今から向かう高崎にミラショーンの販売店はないかと探すが、なかった。
会場の高崎駅のホテルにチェックインして、仕方がないので紺のブレザーでも買うしかないと、向かいの高島屋高崎店に向かう。
スーツ売り場で「このダブルのスーツのボタンがなくなったので、間に合わせに紺のブレザーが欲しい」と販売員に簡単に事情を話した。
「ちょっとお預かりしていいですか」
その販売員はそう言って、奥に引っ込んだ。
どうするんだろう、と思いながらも、時間がないので紺のブレザーを試着して選び出した。
なかなか販売員が戻ってこない。
あれどうしちゃったんだろう、時間ないのに、とイライラし始めたところに
「お待たせしました、ボタンを付け替えました」
見ると確かにミラショーンの貝ボタンである。
「お宅にはこのメーカーは入っていないですよね」
「ええたしかに。でもイージーオーダーの売り場にこのメーカーの生地があるので、見本のボタンがあったをお付けしました」
私は感激した。
「お代は?」
「いえ見本で売り物ではありませんので結構です」
驚いた。
明らかにこの店はブレザーを売りそこなったのだ。
わざわざボタンを取り換えてくれて、さらにお金は要らないという。
感動した。
その夜の講演で、スーツを見せながらその話をもちろん披露した。
付き合いのあった高島屋東京本部広報室に電話し、高崎店でこんなことがあったと報告もした。その話は社長にまで届いている。
以来この話を何回人前でしたり、本にも書いてきたことか。
そして、ああまた今日も書いてしまった、
そんな高島屋高崎店の近くに20年余りたって住むようになったのも縁である。