「西村晃のマーケティングの達人 大繁盛の法則」企業経営・売上アップのヒントを提供

テーマ別企業紹介

地方発企業の可能性を広げる



<シャトレーゼ>

私事だが糖尿病の薬を飲み始めて20年近く、定期的に血液検査をして投薬を受けるようになり、皮肉にも甘党になった気がする。
薬が効きすぎて低血糖気味になるということもあるが、それ以上になまじ糖分を控えなければ、という意識が強すぎてかえって甘いものを欲するようだ。

じつは糖質制限の人向けのケーキやアイスクリーム、また卵や牛乳、小麦粉などにアレルギーがある人用のケーキの開発に力を入れて、他社との違いを強調しようとしている会社がある。
全国に457店を展開する菓子の製造小売業「シャトレーゼ」だ。

地方のロードサイドを中心に出店

「卵や牛乳、小麦粉にアレルギー反応をおこすお子さんはクリスマス会などで一人ケーキを食べられず悲しい思いをしていることがあります。
また糖尿病患者は予備軍を含めると全人口の5人に1人と言われ、甘いものが食べたいのに食べられない悩みをお持ちです。
そうした方々でも食べられるお菓子を開発しています」
研究開発課の保坂徹さんはこう語る。

「アレルギー対応ケーキは牛乳の代わりに豆乳、卵に代えて大豆たんぱく、小麦は米粉で代用しています。
工場内に浮遊した小麦粉などを除去するため機械の洗浄やアレルギー検査も行います。
糖質オフの菓子では砂糖の代わりに人工甘味料を使用します」(保坂さん)

「シャトレーゼ」の売り上げに占めるアレルギー対応商品の割合は1パーセントにも満たない。
糖質オフの菓子に関してはまだ販売が始まったばかり。
それでもなぜわずかのお客のためにコストをかけるのか。

齊藤 社長

「卵や砂糖など幅広く供給されている原料と違い、代替品の方がコスト負担は当然大きくなります。
しかしあえて当社は通常商品とほぼ同じ価格でご提供しています。
『すべての方にお菓子を食べて笑顔になっていただきたい』ということを追求したいからなのです。
それがうちらしさなのです」
齊藤誠社長はこう強調する。

「シャトレーゼ」は山梨県に本社を置く。
「あえて言えば総合菓子会社です。
ナマのケーキにバウムクーヘンといった洋菓子、大福に饅頭、せんべいなどの和菓子、アイスクリームにパンまで自ら製造して販売しています」(齊藤さん)
「シャトレーゼ」の人気の一つに価格の安さがある。
ショートケーキで280円、どらやきなら一個108円だ。
「卵や牛乳などを契約農家から直接仕入れ、自社工場で製品化、卸を介さない販売の結果です。
東京に本社を置く会社が銀座の価格帯で全国販売するのとは違い、ふだんから親しんでいただける価格帯で販売できるのが特徴です」と斎藤さんは説明する。

こなれた価格が人気

実は斎藤社長には今日の経営の原点になったある経験がある。
「30年ほど前、週末にロールケーキの増産に追われました。
それまで冷凍の液卵を仕入れて使用していましたが、間に合わず近くの市場から卵を購入して手作業で割ってスポンジケーキを作ったのです。
すると、いつもとスポンジのふくらみ方が全く違う。
食べてみるといつものケーキより明らかにおいしい、と感じました。
新鮮な卵を使うと安定剤や添加物を加えなくても味がいいし、口どけが違うことを実感しました。
以来契約農場から仕入れた卵を自社工場内で割って使用しています」
この「卵の経験」がきっかけとなり、同社では素材を直接契約農家などから仕入れる体制つくりが始まった。

「山梨が本拠地ですから近隣の清里高原でストレスのない育て方をしている牧場にこだわって搾乳をお願いしています。
ここの牛乳は乳脂肪率が高く菓子つくりに最適です。
小豆やイチゴなどあらゆる素材をこうした観点で仕入れています」

「山梨のシャトレーゼ」だからこそ菓子つくりの原料を地元で調達できるという最高の経営条件を持つ。
山梨県の3か所の工場で1500人が働く。
地元の農産物を素材に大きな雇用も生み出す。
地方発、日本の新産業のヒントが見えてくる。

田畑の中に大きな工場を構える
オフィシャルサイトはこちら