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<大島椿>

東京芝大門にある大島椿の本社で歓喜の声が上がった。
女性に大きな影響力を持つ化粧品美容のポータルサイト「アットコスメ(@cosme)」で2014年にもっともクチコミが多いと表彰が決まったのだ。
同時にフリーペーパー、シティリビング編集部が選ぶヘアケア部門のベストコスメにも同社のヘアオイル「大島椿」が選ばれた。

「化粧品会社にとって大変嬉しいことです。
二つの受賞とも20代から40代を中心にした若い女性の評価によるものです。
売り出して90年もたつロングセラー商品にこうした年齢の女性が興味を持って下さるのはサイトの口コミによるものです。
椿油という天然素材の商品を自分に合った使い方をしているという情報を広げていただいています」
と広報担当の坂本薫さんは語る。

若い女性の支持を集める大島椿ヘアオイル


斉藤 敦 マネージャー

「大島椿」は、その名の通り伊豆大島の椿油を原料にした髪油の生産から始まった。
「ヤブツバキという木の種を工場で圧搾して油を抽出しますが、1本の木から60mlの製品が1本か2本しかできないというくらい貴重なものです。
しかし椿油はヒトの皮脂と同じ成分を多く含むため肌になじみやすく刺激が少ないことが評価されています」
品質保証管理部の斉藤敦マネージャーはこう説明する。

1本の木から小瓶1〜2本しか椿油は取れない

「精製し不純物を取り除く技術を磨いてきたことで、臭いもなく、油だけどベタつかない使用感であるという評価をいただいています。
母親の世代が使用していたものをカラーリングやパーマなどで傷んだ髪に悩む娘世代も使うようになるという具合に世代継承されてきたのが当社商品の特徴です」
(斉藤さん)

髪の傷みに悩む女性は多い

大島椿は髪油のほかシャンプーやスキンケア用品など椿油を原料にした商品群をそろえているが、2012年に新たに発売したのが「ヘアカラートリートメント」だ。
「これは白髪染め、ズバリ「GS世代」向けの戦略商品です。
ソフトブラックとダークブラウンに染められる二種類があり、中高年のご夫婦で使っていただきたい商品です。
椿油だけでなくツバキセラミドを配合しており傷んだ髪を補修する効果もあります」
斉藤さんはこう説明する。

「GS世代」を狙う白髪染め商品


木全 典子さん

メインターゲットの「GS世代」に熱い支持をとりつけ、それを若い年齢層へと下ろしてゆく。
老舗企業のブランディング戦略に死角はない。
「当社は社名にも『大島』を名乗っていますからこの地とは切っても切れない関係にあります。
2013年の台風による災害で多くの被害が出ましたが、復興になにかお役にたつことはできないかと昨年からこの椿まつりでイベントブースを設けて観光客増加のお手伝いをさせていただいています」
こう語るのは「大島椿」の木全典子取締役だ。
「『伊豆大島に来てください』というメッセージカード添えミニサイズの椿油を大島のおみやげ品として用意しています。
また売り上げの一部を大島町に寄付しています」

椿まつりに出店

昭和2年。
大島椿の創業者岡田春一氏は、大学の卒論のテーマを探そうと全国を旅した。
たまたま訪れた伊豆大島で女性の髪が一様につややかなことに気が付く。
島民が地元の椿の種から採れる油を髪につけていることを知り、これを全国に販売しようと会社を設立した。
まだテレビもない時代に岡田さんは「あんこさん」のキャラバン隊を組み、全国に大島の椿油をピーアールして歩いた。
「あんことは地元の言葉であねこ(姐こ)さん、女性の敬称です。
絣の着物に帯の代わりの前垂れ、そして頭には手拭いを独特の形に巻いた女性たちは全国に知られるようになりました」
(木全さん)

全国を回ったキャラバン隊

こうして伊豆大島の椿油とともに「大島椿」の商品は全国に知れ渡る。
その後髪油だけでなくシャンプーやヘアケア用品、スキンケア用品など商品アイテムを増やしてゆくが、いずれも椿油を原料にしてきた。
現在は東京八王子に新設した最新鋭の工場で生産しているが、天然の椿油を原料にしていることは昔と変わらない。
ただ、「大島椿」にとって、伊豆大島で生産される椿油だけでは供給が足りなくなってきた。

「もともと防風林だった椿の木が老朽化してきたこと、そして木に登り種を集める重労働に携わる人も高齢化で減ってきています。
高品質の椿油を大島以外にも求めなければならない現実はあるものの、私たちの会社のルーツである伊豆大島の椿油へのこだわりもあり、今後は当社自身で植林していけないか検討しています」
と木全さんはこの島への愛着を滲ませた。

摘み取りは重労働だ

岡田 一郎社長

「東京の銀座や新宿、渋谷に上野、大阪なら梅田にミナミ、そして石垣島です」
ヘアケア用品などのメーカー「大島椿」の岡田一郎社長は、「最近外国人が日本にきてドラッグストアやバラエティストアで同社の商品を買い求めるケースがとみに増えている」と語る。
「大都市繁華街と並んで台湾から沖縄を訪ねる観光客が立ち寄る石垣島で売り上げが伸びています。
日本での評判を聞きつけ観光土産で買って帰るお客さんは円安効果もあり、大変増えています」
「大島椿」ではこうした外国人が自国でPRしてくれるアナウンスメント効果に期待を寄せる。

「当社は戦前からハワイの日系人向けなどとして輸出販売してきました。
そして、この10年あまりで上海、香港、シンガポールなど海外への展開を加速させています。
アジアでは椿油を髪につける習慣はなかっただけに、日本での当社商品の評判を現地で広めていただくことが何より大切です」
(岡田社長)

石垣島のドラッグストアでは
扱いも大きい
海外旅行客向けのPR

椿油を使う習慣がなかったのに購入するくらいだからあまり価格にはこだわらないようだ。
「現地の生活水準では相当高価格だと思われますが、日本の化粧品に対する評価は高く強い購買意欲を感じます」
実は岡田社長は将来に向けてもう一つの海外戦略を持っている。
それは食用油としての椿油の販売を拡大しようというものだ。
「これまで食用に使われてこなかったのは、一般の天ぷら油との間に大きな価格差があったからです。椿油はざっと10倍近い価格なんです」
しかし、それでもプロの料理人は椿油で天ぷらを揚げるとカラッとしておいしいと評価する。

「来年はイタリアでミラノ万博があります。
日本館のレストランの天ぷらを私たちの会社の『椿てんぷら油』で揚げる話が決まりました。
一般への普及はともかく超一流と言われるプロが椿油を選んでくれることがまず大切です」
(岡田社長)

椿てんぷら油は高価格だがカラッと揚がる


日本食が海外で注目される中、椿油がどう評価されるか注目したい。
90年の伝統を持つ大島椿。
伊豆大島の椿油を全国区の髪油にした創業者、シャンプーなどへと多角化を図った2代目、そして46歳の3代目が次の一手をどう打つか、手腕が問われる。

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