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テーマ別企業紹介

中高年が買いたいと思わせる提案


おもてなしの売り場

ワコール

瀬上 秀雄 常務

首都圏有数の人気住宅地、東急田園都市線
「たまプラーザ」。
70年代から80年代にかけて次々に住宅が建てられた。
駅前の「東急百貨店たまプラーザ店」の客層は中高年の女性が圧倒的だ。
「そんなお客様に、落ち着いてくつろげる下着売り場を提供してきただろうかと考えたとき、大変疑問に思いました」
と、ワコール常務取締役の瀬上秀雄さんは語る。

「たくさんの商品があってもどれが自分にあったものか、この価格に見合う価値があるかといったことを吟味できるような場所も、おもてなしもできていなかったと思いました。
当社は人間科学研究所をつくり長年女性の体形について研究してきました。
そうした情報を提供しながらフィッテイングで正しい下着にめぐり合う喜びを実感・体感していただく環境を創ろう、と考えました」

この新しいコンセプトの1号店に選ばれたのが3年前、一階から二階に売り場移動、リニューアルしたこの百貨店内のショップだった。
ここではゆったりとしたソファを中央に置き、韓流スターの雑誌などもそろえ、接客もゆっくり時間をかけて試着も念入りにしてもらうという店にした。
その結果、二階に上がると売り上げダウンが常識という中で、逆にこの売り場は売り上げを伸ばしている。
「25000円クラスの最高級品のブラジャーがよく売れるなど高額商品ほど順調です。
お客さまアンケートでも95%以上の方から売り場を評価いただきました」
と瀬上さんは手ごたえを感じている。

坂東 敬子 プロデューサー

ここの人気商品に「グラッピー」がある。
中高年に入るとどうしても筋力が低下して姿勢が悪くなったり、動作がスローテンポになる。
体の動きをサポートする下着を作りたいと、2年間の研究開発を経て「グラッピー」を発表したのが99年だった。

ところが・・・。
「ワコールが新ブランドを発表すれば全国の百貨店でお取り扱いいただけるというのがそれまでの常識でしたが、最初に扱ってくださったのは新宿の京王百貨店だけ。
その後7〜8店舗が加わりました。
グッドデザイン賞をいただいた割には地味なスタートでした」
と、ワコールブランド総合プロデューサーの坂東敬子さんは笑う。

百貨店側に聞いてみると、当時はまだ婦人下着売り場は若い女性を意識したカラフルなお洒落な下着で彩るというのが一般的で、中高年向けの下着を積極的に展開すると売り場が老けて見えるという判断があった、という。
だが、それから10年あまり、社会全体の高齢化が進んだこと、また特に百貨店の主要顧客層が「グラッピー世代」になったことで、百貨店側の意識は大きく変わり、取り扱いは大幅に増えた。

「現在は百貨店250店ほとんどのお店でお取扱いいただいています。
売り上げは初年度1億円がいまは30億円くらいになりました。
当社の百貨店向け商品の20%弱をグラッピーが占めています」(坂東さん)
「グラッピー」への認知が急速に進んだのである。
「グラッピー」の広告宣伝のキャラクターは歌手の伊東ゆかりさん。
1947年生まれの67歳はまさに適役だ。

「若い女性の商品売り上げ構成はブラジャーが圧倒的ですが、グラッピーでは下半身をサポートするガードルは重要アイテム。
筋肉の衰えは下半身から始まるために脚を上げたり、しゃがむのが楽になるという股関節サポートを強調しているグラッピーが支持されていると思います」
こう語る坂東さん、広がる市場に確かな自信を見せていた。

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