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テーマ別企業紹介

伝統技術の上に 現代にニーズを 見据えた新提案


有田焼は2016年で生産開始400年

匠(たくみ)

西山 典秀 社長

有田焼は400年の伝統を持ち、その芸術性は、日本国内はもちろん江戸時代以来南蛮貿易の主力商品として世界で評価されてきた。
今も町内には多数の窯元が残る。
しかし「匠」は、そうした代々受け継がれてきた窯元ではない。
商品の企画を立ててサンプルまでは作るが、実際の生産は、窯元に発注する企画と卸の会社だ。

西山典秀社長は、有田町の精米店に生まれ、自動車のセールスエンジニアをしていた。
その後偶然転職した先が、焼き物の商社、ここで郷土の地場産業との接点が初めてできた。
「陶磁器の問屋に勤務していた兄と一緒に独立し、さらに昭和61年に卸の会社を自分で作ったのが現在の『匠』の創業です。
埋もれている陶工の技を発掘し市場に紹介しようというのが社名の由来です」
西山さんはこう語る。

各地で個展などをしながら販路を拡大してきたが、そこで偶然知り合った病院長からヒントをもらう。
「入院患者さんたちにたくさんごはんを食べてもらいたいけれど、プラスティックの容器は軽くて割れないから管理は楽な反面、無味乾燥で食欲がわかないというのです」
西山さんは地元にある佐賀県窯業技術センターと共同で、割れにくく、磁器ではあるが比較的軽量の食器の開発をはじめた。
陶工の作品は手作りだから、当然一つ一つ機械生産のように画一的というわけにはいかない。
だが機械で洗う給食の食器は大きさが違うと破損のおそれもある。
伝統技術の町で、画一的な給食用の食器を作るというのは一見矛盾しているようにもみえる。

有田焼といえば伝統工芸品を連想しがち・・・


「いや、給食用だからこその『匠の技』の技術開発が求められます。
どれも寸分たがわず、しかも軽くて割れない、プラスティックやアルマイトに勝つ磁器の開発に賭けました」
(西山さん)

ついに商品化に成功する。
ダイヤモンドに次いで硬いといわれるアルミナを配合した陶土を1300度という高温で焼くと、通常の2〜3倍の強度を実現できることが実証された。
「匠」が開発した強化磁器の食器は、現代技術の粋を集めて作られた。
「数ミリ単位の違いも許されない精度で作り上げているのは、給食用の洗浄機における破損を防ぐためです。
最新鋭のCADーCAMで設計し、生産工場もその品質水準に耐えられるところだけに発注しています」
西山典秀社長はこう力を込める。

発売後、病院や老人施設、そして学校給食へと次々と採用が決まっていった。
「日本人の文化は、器を手に持って食べる文化です。
世界を見回しても文化度が高い国でプラスティックの食器でご飯を食べているところは見かけません。
とくに中高年の人たちは和食が好きだからこそ、病院や老人施設に行っても自宅と同じようなお茶碗でご飯が食べたいと願っているはずです」

給食用食器で飛躍

そして西山さんのもう一つの夢は、郷土有田を子どもたちに知ってもらうことだ。
「学校給食で愛用した食器が有田焼であることを知ってもらいたい。
伝統技能も大切だけれど、子供たちが日常的に触れるものではありません。
毎日使う食器だからこそ愛着もわくのではないでしょうか」
北海道から沖縄まで「匠」の器は学校給食で採用され、強化磁器への転換は4割近くになっている。

西山さんの願いがかなうのも夢ではなくなってきた。

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