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日本版アウトレットで市場を拓く


三井アウトレットパーク木更津

三井不動産

あのガラガラだったアクアライン(東京湾横断道路)に車が並ぶ!?
トンネルの中に続くテールライトに、アウトレットの威力をまざまざと見せつけられる。
千葉県木更津市に「三井アウトレットパーク木更津」ができてから車の流れが変わったのだ。
大型店の撤退に商店街の衰退、工場誘致もままならなかった地元にとっても大きな転機となった。

アクアラインのインターチェンジからほど近く、東京湾も臨める地に敷地面積21万平米という広大な土地。
「もともとは田畑だったところに、リゾート感覚で開放感のある施設をデザインしました。
近くでは潮干狩りや漁業もおこなわれていますし、ここに来ると世界観が変わると感じていただけるような施設にしたいと思いました」
担当した三井不動産商業施設本部の片山朋之さんはこう語る。
施設は空も広く見えるように平屋にこだわり、平面駐車場で4300台分を確保、さらに将来増床拡張の余地も残している。

駐車場の拡張の余地はまだある

三井不動産のアウトレットとして国内12番目、チェルシーグループなど他社の施設もあるからアウトレットそれ自体はもはや珍しい存在ではない。
それだけに「レジャー感覚で気軽に遊びに来られるところ」として認知してもらうことが大切だ。

「ペットと休憩できるドッグレスト、キッズパーク、さらにはパターゴルフ場など、幅広い世代で楽しめる施設を導入しました。
またフードコートにも力を入れ、地元で人気の『マザー牧場』のカフェ、旅館『かわな』の料理店など地域色を出しています。
千葉県の海産物などを扱う店や観光情報館を設置、房総観光とのタイアップも狙っています」
片山さんはアクアラインに近い立地は大きなポイントだと続ける。
「東京、横浜からくるお客さんを7〜8割。
開業当初は近隣のお客様の割合が多かったですが、ツアー客などアクアラインをわたって房総観光の行き帰りに数時間ここで過ごすという人が増えてきました」

ペットOKの表示の店も
ペット連れが目立つ

施設内を行き交う人を観察すると、まず親子三世代が多いことに気付く。
ベビーバギーを「GS世代」の祖父母が見守る間に、若い両親が買い物する姿があちこちで見受けられる。
またペットを連れた人が多いのも特徴だ。
「食事だけに来ていただくというお客様があってもいいと思います。
我々のアウトレットは比較的都市部からも近く、月に何度か来ていただくことも可能です。
気軽に立ち寄れるというのが当社のアウトレットの特徴です」(片山さん)

子供の遊び場もあり三世代も目立つ
フードコートも充実

横浜ベイサイド、入間、幕張、多摩南大沢、そして木更津・・・。
三井不動産が首都圏に展開するアウトレット施設に共通するのは国道16号が通るエリアであるということだ。
首都圏30キロから40キロ圏を環状する国道16号エリアは、都心へ1時間通勤圏、特に「GS世代」が住宅を取得し始めた70年代以降にベッドタウン化したところが多い。
たとえば多摩南大沢のアウトレットは多摩ニュータウンに隣接する。
首都圏以外でも三井不動産は神戸や長島、札幌北広島、倉敷など都市周辺にアウトレットを多く建設してきた。

こうした立地はアウトレット先進地の欧米では珍しい。
メーカーが季節外れやはんぱものなど「理由あり商品」を低価格で処分するアウトレットは、百貨店など正規価格で販売する店との競合を避けるため大都市から離れたところに設けるのが普通だからだ。
その点軽井沢や御殿場、佐野といったアウトレットはこの原則通りの立地で、地元に百貨店などがないから高級ブランドの出店も可能となる。

三井不動産はあえてそのことは承知の上で「日本版アウトレット」を作ってきた。
「超一級の高級ブランドばかりにこだわる展開ではありません。
もちろん日常品だけでは商業施設の魅力が薄れますから、知名度の高い人気ブランドは誘致しますが、私たちは比較的住宅地にも近い立地で、家族で遊びに来てくださる施設は利用頻度が高く、地域の発展にも寄与すると考えました」
三井不動産商業施設本部でアウトレット事業を束ねる大場修グループ長はこう説明する。
たしかにアメリカ系のチェルシーグループが展開する「御殿場プレミアムアウトレット」は「プレミアム」と名付けるほど、超一級ラグジュアリーにこだわっている。
また軽井沢のプリンスホテルのアウトレットもリゾート地としての国際的知名度が海外有名ブランドのアウトレット誘致に大きく貢献しているという。
その点三井のアウトレットは、若い層を中心にしたカジュアル系ブランドが多く、スポーツ・アウトドア用品や子供衣料も豊富で、高額商品ばかりの品ぞろえではない。

ブランド品からカジュアルまで

新しくできた木更津の場合は「GS世代」が今後増えることも念頭において刃物で知られる「日本橋木屋」や、「マイセン」「ウェジウッド」「ユトリノクウカン マーケット バイ 栗原はるみ」といった生活雑貨を充実させた。
入間のアウトレットの場合は、会員制スーパーの「コストコ」が隣接する。
また横浜ベイサイドも車で5分も走ればやはり「コストコ」があり、休日は買いまわる家族連れも多い。
「いくつかの商業施設が隣り合うような立地はむしろ望ましいと考えています。
アウトレットを特別な存在とするのではなく、生活の中で使い込んでいただくような存在にしていきたいと思います」
大場さんはこう締めくくった。

三井アウトレットパーク入間
横浜ベイサイドマリーナ

ここ10年余り消費低迷の中で急速に市場を拡大してきたアウトレットもこれからが正念場となりそうだ。
「これからは、既存施設の増床やリニューアル、また来店頻度をどう高めるかといった運営技術の向上が我々に求められると思います」
と大場さんは語る。

これまで地方から、工場や大型店、テーマパークなどの跡地利用案のなかに必ずといっていいほど書きこまれてきたアウトレット誘致案。
たしかにアクアラインの利用率向上やチボリ公園の跡地利用を見ると大きな効果があったことは間違いない。
しかしこれからは、無制限にそうした期待に応えられるわけではないだろう。
都市近郊の気軽なレジャー空間を創出することで新しい市場を提案してきた三井不動産にとってもアウトレット生き残りの真価が問われる時代を迎える。

三世代で来る利用者が多い割には、これまでアウトレットで「GS世代」向けの商品は限られていた。
「GS世代」向けのイベントも含めてアウトレットにおいてもこの層の取り込みは挑戦すべきフロンティアかもしれない

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