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京王百貨店が今年50周年を迎える。
高級ブランドの品ぞろえより、駅弁大会で知られる京王百貨店はまさに「新・大衆百貨店」といえる。

新宿の京王百貨店は今年50周年

京王百貨店


京王百貨店が今年50周年を迎える。
1964年、東京オリンピックの年に開店した。
京王電鉄として初の百貨店進出だったため高島屋から従業員教育や仕入れなどのノウハウ提供を受け、その後も提携関係を続けてきた。
その「兄貴」が1996年新宿に進出することになる。
「ショックでしたね。新宿戦争で真っ先に影響を受けるのはうちかもしれない、という危機感が社内にあふれていました」
伊藤嘉彦社長はこう述懐する。
「当時の社長は、『新・大衆百貨店』という考えを打ち出しました。高額品が並ぶブランドショップで勝負するのではなく、広くお客様に受け入れられるこなれた価格で、お取引先に頼らず百貨店が主体性をもって商品開発や売り場作りに取り組む『自主編集』で活路を拓こうとしました」
そして、京王百貨店が主たる顧客層として絞り込んだのが当時50代の人々、現在の「GS世代」であった。
「この世代の人たちは、嫁・姑の同居が当たり前だった前の世代と違い、自分たちで家を建て、都会・または近郊に住んでいる。だから束縛がなく自分で自由に使えるお金と時間をもっている。だから行動的です」
伊藤社長は「GS世代」のとくに女性の特徴は「お出かけにある」と力を込めた。
「パートなどの仕事に出たり、友人との付き合いも多く、特別なハレでなくても日常的に外出をしています。そんなときに着てゆくカジュアルな衣料品こそ、当社がもっとも得意とするところです」
顧客の5割が「GS世代」以上、とくにミセスのフロアの顧客の8割がハウスカードのホルダーで占められる。
常連客が多いから、何を買おうとしているか分析も行き届き、結果として「顧客の顔の見える経営」が可能だ。

「婦人靴のフロアで、大きなスペースをとっているのがウォーキングシューズです。若い女性を狙えば、ハイヒールやブーツ中心の品揃えにするでしょうが、うちはとくに疲れない平底の靴と幅広のサイズまで豊富にとり揃えています。150平方メートルの広さに800足ものウォーキングシューズという品揃えは日本一です。また帽子のコーナーはけっして大きくはないものの、中高年女性の旅行やピクニックに使う帽子の品揃えに絞って充実させています。これも日本一です」
(伊藤社長)

ミセスに圧倒的な支持

高級ブランドの品ぞろえより、駅弁大会で知られる京王百貨店はまさに「新・大衆百貨店」といえる。
そして若い女性をターゲットにした有楽町西武などが閉店するなかで、「GS世代」の日常のお出かけ需要に応えてきた百貨店が、新宿戦争に生き残り、善戦健闘していることは注目に値する。

ブランドに頼らず顧客目線の品ぞろえ

その京王百貨店の特徴的な売り場に「リフレピア」がある。
「リフレピア」とは、リフレッシュとユートピアから成る造語だ。
「百貨店は利益効率から衣料品を中心に販売してきましたが、中高年ともなるとそうそう服ばかり買うこともなくなってきます。そこで健康とか癒しといった切り口の新しい売り場を作ってみようと、260坪の規模で2004年にスタートさせました」
伊藤社長はこう語る。
売り場中央に自然派化粧品やボディケア、フットケアという商品が並ぶ。
こうした商品は雑貨店やスーパーならともかく、余り儲からないと百貨店ではこれまで大きな売り場にはならなかった。
またかなりゆとりのある漢方薬の相談窓口には漢方茶の喫茶コーナーも併設されている。
リフレピアには、ほかにも軽いものから本格的なマッサージ店まで3種類のリラクゼーションサロンが並ぶなど、まさに健康と癒しが商品化されている。
介護用品を集めたハートフルプラザも「リフレピア」に隣接し大きなスペースを占める。
京王百貨店は本格的介護用品売り場を89年の敬老の日にスタート、最初は階段わきの隅にあったが、いまや堂々と大きな売り場に成長、杖などの品ぞろえは目を見張るものがある。
「この3月の改装で、さらに『非衣料品』の売り場を拡充させるつもりです。女性はきれいになりたいという思いが強いですから、化粧品をはじめとする美容関連は重要なポイントです。健康、快適という切り口から寝具やバス用品のような部門も伸ばしたい。さらに趣味的なものも掘り下げていこうと思います。スポーツや旅行、調理器具に対する需要はリタイア世代の男性も意識した売り場構成にしたいと考えています」
伊藤社長は、こうした売り場を増やすことは結果として幅広い年代層に支持される「エイジレス」な店づくりにつながる、と語る。

「今後も「GS世代」が主要顧客であるとは思いますが、それに続く次の40代、50代の人たちにも受け入れられる店づくりも進めていかなければなりません。店としては、次の世代にも合わせた商品の若返りが今後の課題ですが、実は「GS世代」はトレンドに敏感ですから、若々しい商品にも興味を持ってくださるのではないかと期待しています」
(伊藤社長)

バブル崩壊後、日本の百貨店はピーク時の7割前後の規模まで市場を縮小させてしまった。
法人外商の激減、他業態との競争など構造不況のトンネルから脱することができない中で、中高年の個人客に、こなれた価格の商品を提案する京王百貨店の路線に百貨店生き残りのヒントが隠されているようだ。

伊藤嘉彦社長と
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