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テーマ別企業紹介

近畿日本ツーリストから独立したクラブツーリズムは、
再びKNT―CTホールディングスとして同一グループとなった。
「GS世代」に圧倒的強みをもつ旅行会社だ


クラブツーリズム


クラブツーリズムのスタートはもともと近畿日本ツーリスト渋谷営業所である。
1980年、高橋秀夫さん(元クラブツーリズム名誉会長)が所長に就任する。
それまで渋谷営業所は繁華街という恵まれた土地にありながら、有力法人顧客に偏りがちな営業が災い、営業成績は低迷していた。
高橋さんは、新聞広告で旅行商品を紹介するという「メディア販売」に打って出る。
いまではよく見かける手法だが当時はまだ前例がなかった。
年商17億円の渋谷営業所が新聞に年間1億円の広告を出すという高橋さんの提案に、最初は本社の営業責任者も首を縦に振らなかった。
しかしこれが当たる。
「電話にとびつけ!」、広告が出ると営業所の電話が鳴り続け、高橋さんの号令が飛んだ。
反応は圧倒的にお年寄りを中心にした個人客だった。
これまで旅行商品の買い方を知らなかった人に電話で注文するという利便性を提供した。

そのころ、旅行業界を巡る環境も一変していた。
法人などの団体旅行は激減、変わって個人の好みに合わせた旅行商品が求められるようになっていた。
赤字だった渋谷営業所は3年で全国最優秀営業所になり、東京メディア販売事業部と改組、その後2004年完全独立新会社「クラブツーリズム」となった。


現在新聞広告とともにクラブツーリズムの有力販促手段となっているのが、ツアーに参加したことのある家庭に配られる「旅の友」という無料旅行情報誌だ。
単なる旅行商品の紹介にとどまらず、会員の投稿などコミュニケーション誌としての役割をもつ。
手元の新年号を開くと、初詣特集「神様との強い絆を結ぶ7つの秘訣」、「世界で食されるスパイス料理」、「秩父札所めぐり」など多彩な内容だ。
驚くのは全国で毎月300万世帯にこれが配られ、しかも配達をお客さんが担っているということである。
「エコースタッフと呼ぶ8000人が平均250から300世帯を受け持っています。
当初どうやってお配りするか悩んでいたら配達をやってくださると、お客様が手を挙げてくれました。
75歳までとしているのですがもっと続けたいという元気な方が大勢います」
岡本邦夫会長は、同社の最大の特徴はここにあると言う。
「他にも添乗やガイドをしたいというフェローフレンドリースタッフ、身体の不自由な方のお手伝いをしてくださるトラベルサポーターもお客様から募集しています。
一度きりのお付き合いではなく長いお付き合いをして頂けますから、サービスの改善、商品開発にも貴重なご意見をいただけます」
閉塞市場に、「GS世代」という固い顧客に支えられている強味を感じる。

クラブツーリズムの人気商品に「おひとり参加の旅」がある。
ふつう一人旅というのは効率が悪く歓迎されない。
とくに年末年始の有名旅館など一人で申し込めばまず断られる可能性が高いだろう。
しかしひとり寂しくお正月を迎えなければならないという人はやはりいる。
そうしたニーズに応えるのが同社のビジネスの基本だ。
たとえば今年大晦日出発の「岩手・遠野のお正月コース」。
遠野で語り部による民話を聴きながら年越し、遠野八幡宮での初詣、乳頭温泉や中尊寺などを4日で回り、1名1室利用のホテルが確保される。
集うのはみな一人旅、他のツアーなら夫婦、家族連ればかりの中に一人ぽつんと入るからより一層孤独を感じるだろう。
このツアーで旅仲間に出会い、次回からは一緒に出かけようという人も出るはずだから、クラブツーリズムにとっても顧客創出の意味はある。
「これまで旅に行くなんて考えられなかったという方に旅を提案したい。
今後は、バスは原則トイレ完備を目指します。
また車いすでも旅が楽しめたり、バス旅行集合場所までタクシー会社と提携して送迎する、あるいは行程自体にゆとりを持たせたり、なるべく歩かないようにするなど、いまは主要顧客の「GS世代」がさらに70歳、80歳になっても旅を諦めないような商品提案をしていきたい」
岡本邦夫会長は、工夫次第でまだまだ中高年マーケットは切り開けると意欲を示す。
「GS世代」は旅のビギナーをサポートするという以前のツアーの発想では満足しない。
新しい旅の切り口が常に求められる。

クラブツーリズムは、企業の工場やホテルのバックヤードを見学する「大人の社会科見学ツアー」の商標登録をとりこの分野にいち早く取り組んできたほか、旅行会社で初めて専用列車を今月23日近鉄に誕生させるなど一味違う旅を提案してきた。
2008年から南極点を訪ねるプランを実施、13人がすでに南極点に到達した。
イギリスの会社と提携して民間宇宙旅行の販売も始め、早ければ来年にも実現の見通しだ。
「団塊の世代が60歳を過ぎれば旅行市場にプラスと言われてきましたが、実際には60代前半はみなさんまだ仕事をしていました。
65歳に達する来年以降は本格的なこの市場の成熟期になるはずです。
これまでのデータの蓄積を活かし、あらゆるニーズに応えたいと思います」
と岡本会長は語った。

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