「西村晃のマーケティングの達人 大繁盛の法則」企業経営・売上アップのヒントを提供

テーマ別企業紹介

実地調査で定評がある「リサーチ&ディベロプメント(R&D)」、
「GS世代」=「ゴールデンシクスティーズ」、
「黄金の60代」の分析を依頼する企業が増えている。


リサーチ&ディベロプメント(R&D)


通勤客で混雑する東京駅。
いわゆる「駅ナカ」の店舗が並ぶ一角で、行き交う人を鋭い目線で追う男性がいた。

「通勤帰りの人たちがどのようにお店を利用しているかを調査してきました。
グループインタビューなども行いますが、やはり現場で人々の動きを目で確認したいので時間があれば『駅ナカ』の実態を見に来ます」
こう話す渡辺友仁さんは、マーケティング・リサーチ会社「株式会社R&D(リサーチ・アンド・ディベロプメント)」に勤務している。
R&Dが「ジェイアール東日本企画」の依頼で行った
「会社帰りの寄り道実態調査(2012年/東京圏のサラリーマン・OLを対象)」によると、社会人の帰宅機会週5日のうち47%、すなわち2日に1回は寄り道をしているという。
「寄り道は移動中思い立って行う人が多く、非計画来店が3分の2を占めます。その人たちを取り込む仕掛けの一つが『駅ナカビジネス』だと思います」と渡辺さんは言う。
消費は冷え込むというが、それは既存のビジネスが顧客ニーズを取り込めていないということかもしれない。
例えばこの調査結果からは、以下のようなことが見えてくる。
「駅ナカは、仕事とプライベートの中間、つまりオンとオフの切り替え場所に立地しており、そこを通りぬけていく移動者視点での消費者分析が欠かせないと思います。一日良く働いた、だから自分になにかちょっとしたご褒美をあげようとか、ストレス発散・気分転換のためにショッピングを楽しもうとする心理も見逃せません」(渡辺さん)
ここに注目すれば、「買う」という行動を誘発することができ、ビジネスチャンスが生まれてくる。

「R&D」には消費財メーカーや商業施設などから顧客動向をつかんでほしいという調査の依頼が引きも切らない。
そしていま最もクライアントからの調査依頼が多いのが、
「GS世代」=「ゴールデンシクスティーズ、黄金の60代」
の消費者の意識態度を探るテーマだという。
「これまでもこの年齢層に向けては様々な商品が投入されてきましたが、必ずしも成功事例は多くありません。そこでグループインタビューやご家庭訪問調査など丹念な消費者意識を探る調査をして、『GS世代』の実像をあぶり出す作業をしています」
小林久美子取締役はこう語る。
「今まではシニア=弱者という捉え方でしたが、急激に高齢化が進む中、今の60代以上のシニアの多くは健康で普通の生活を楽しんでいます。しかしその実情をつかめないまま、シニア対応に迷走するメーカーも多いようです。シニアの生活を知る、まずその一歩を私達はお手伝いしています」

東京の下町、人形町のビルの一室から楽しそうな笑い声が聞こえる。
中央に60歳代の女性5人が座り、司会進行役のスタッフはいるが、自由な雑談が交わされる。
飲み物、お菓子コーナーへの行き来も自由で、まさにおしゃべりを楽しんでいる。
これは「リサーチ・アンド・ディベロプメント」の自主企画「iDOBATA」の風景である。
「シニアの実情を知りたい、という企業の方々にお応えして、まさに井戸端会議風のシニアコミュニティーを作ってみました。調査と堅苦しくかまえず構えず、普段通りにおしゃべりをしていただきながらシニアの生活を垣間見る仕掛けになっており、自由に見学もしていただけます」
小林久美子取締役はこう答える。

この日の「iDOBATA」テーマは「これからやりたいこと」だった。
「付箋にこれからやりたいことを書いてもらったら、ホワイトボードを埋めつくさんばかりの付箋の数になりました。旅行や習い事もありましたが、パラグライダーや気球などの『空モノ』、舞台で違う自分を演じたい、プロにメークやファッションを全てやってもらいたいなどの『変身モノ』、昔の趣味だった写真に取り組みたいなどの『復活モノ』…実に様々な視点でやりたいことが語られています。好奇心旺盛さには驚くばかりです」
やりたい、という希望だけではない。
「この世代に一日の過ごし方を聞くと必ず『習い事やお友達とのお出かけに忙しい』という答えが返ってきます。特に女性は付き合いの幅も広く、地域に根ざしたネットワークも持っており、誘い合っての習い事やイベントでスケジュールが埋まっています」(小林さん)

情報収集にはパソコンやスマートフォンも使われている。
「私より使いこなしているという方もいらっしゃいますし、これからブログに挑戦したいとのご意見もありました。旅行のプランを組み立てるのもパソコンで調べればパンフレットを集める手間がない、お取り寄せで手軽においしいものにも出会える等、『楽で手軽』を求めて積極的にパソコンを使いこなしている世代と言えます」
「リサーチ&ディベロプメント」はこうした「GS世代」の分析をメーカーに伝え、商品開発などに役立ててもらっている。
「『GS世代』はITスキルもあり、娘さんを情報源に新商品やトレンドを的確に集めています。『年寄り扱い』をすると大きな間違いです。私たちはこうしたコミュニティーやインタビュー、家庭訪問により『GS世代』の膨大なデータを集めてきました。そこに関心を持って下さる企業は飛躍的に増えています」(小林さん)
食品はもちろん、化粧品、自動車、不動産など様々な業種の熱いまなざしがいま「GS世代」に注がれている

「リサーチ・アンド・ディベロプメント」の橋本紀子取締役は、ご家庭を訪問し、その生活空間を見せていただくことで、さまざまなことが読み取れる、と言う。
「特に冷蔵庫はそのお宅の食生活を雄弁に語ってくれます。『GS世代』のお宅の冷蔵庫は冷凍食品やチルド商品が豊富に収められています。メニューのバリエーションも和洋様々。学校給食世代ですからパンを中心にした洋食への抵抗感は全くないですし、子供のお弁当に冷凍食品と電子レンジを使いこなしてきた人たちでもあります。今は子供用ではなく、『習い事やお友達とのお出かけに忙しい』自分を助けるアイテムとしてそれらを使いこなしています」
特に食意識については、中高年と言っても『GS世代』と70代以上で差が見られると言う。
「70代は我が家の伝統的な味付けを残したい、というこだわりを持っていますが、ニューファミリーと言われた『GS世代』は「嫁に入る」という発想がなかったからそうしたこだわりはありません。近年高い価格のほうから売れるといわれるおせち料理もこの世代が積極的に購入しています。お正月に孫たちとにぎやかに過ごすためには豪華おせちは欠かせない、と思うようです」
また、こんな新しい感覚も持ち合わせているとも語る。
「市販のドレッシングにハーブや香辛料をくわえてオリジナルなものに仕上げるような工夫は喜んでするという人が多いですね。お惣菜にも調味料をちょい足ししたり、盛り付けに手間をかけたり。外食も良くする人達ですので、外食で食べたメニューを再現して自分のレパートリーに加えたりもしています」(橋本さん)

そうした合理性や現代性にこそ、「次の一手」へのヒントがありそうだ。
「キーワードは『時間』です。子育ても終わり、気持ちも体も元気で好奇心も旺盛、これからやりたいことが多いから、本人たちは時間が足りないと思っています。習い事もパソコン、習字にオカリナ、フラダンスやヨガといった具合、もちろんランチタイムバイキングや、花見に旅行もあります。『多忙なGS世代』は暇な隠居暮らしという従来の高齢者とは違います」
橋本さんは「GS世代」の特徴をこう分析する。
もう一つ橋本さんが強調したことがある。それは夫婦の付き合い方だ。
「70代は男尊女卑的な感覚がまだありましたが、『GS世代』はそれがないのです。いわば友達感覚。男女共学になって以降の世代ですから、同級生同士で結婚した人もいます。お出かけや旅行は奥様に連れられてという「婦唱夫随」のカップルが街に繰り出しています。このあたりも今後の消費者動向を考えるうえでヒントになるかもしれません」

「GS世代」という新しい中高年消費者への考察から「次の一手」への模索が始まっている。

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