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「勝負封筒」に使っていただきたいこの逸品、「あなたのこだわり」を表現します。

低価格勝負の事務用封筒から脱して人柄や会社の格も示すこだわりの封筒を提案するハグルマ封筒。ニッチ(すきま)市場を求めてのスタートだが、隙間は掘ってみれば意外に広く深い市場であると、手応えを感じている。

ハグルマ封筒株式会社

2001年。
東京の表参道の一角に便箋や封筒を販売する洒落た店がオーブンした。
「ウイングド・ウィール」。
和紙や世界最高と評価の高いコットンペーパーを使い、印刷加工には五百年の歴史を持つ活版印刷、彫刻版加工を取り入れ、デザインは日本ならではのモチーフ、色づかい、丁寧な仕上げにこだわる。決して安い金額の商品ではないがネットや口コミで評判を呼び年々確実に売上を増やしている。
実はこの店が、大阪の老舗封筒メーカーが新しいビジネスモデルを構築するために作った「戦略店舗」であることを知っている人はそれほど多くはないだろう。

この店を経営する「ハグルマ封筒」は大阪の南部堺市にある。
創業は1918年、現社長の杉浦正樹さんは4代目になる。
請求書などに使う窓付き封筒を考案するなどこれまでオリジナルな封筒を作り出してきた。
封筒業界は競争が熾烈だ。1000億円と言われる市場を大小15社あまりのメーカーが奪い合う。不況や電子メールの普及によりマーケットが縮小するなかで各社の生き残りは厳しい。郵便法により封筒のサイズや重さはおのずから決まってくるし、1社のアイデアを他社もすぐに採用するから商品の差もそれほどない。とくに事務用封筒、ダイレクトメール用封筒となれば価格がすべてと言ってもいいほど購買理由のほとんどを占めてしまう。

そうした中でハグルマ封筒がとった戦略は、いかにしたら封筒の持つ本質的な価値を高め圧倒的によい商品をつくることができるか、すなわちブランド化にあった。
「素材・加工・デザイン・売り方・使い方までをひとつの文化として提案したいと考えました。封筒本来の役割である『伝える』ための最高の商品をつくればその先がみえるのではないか、と考えたのです」
杉浦さんはこう語る。
杉浦さんはまずブランド戦略の手始めとして海外の市場調査を行った。
封筒やカードはやはり欧米の文化に深く根付き、フォーマルなコミュニケーションのツールとして位置付けられている。日本でも和紙にしたためた手紙はあるが、筆を使った縦書きの手紙はやはり一般的ではなくビジネスの世界ではほとんど使用されていない。海外では万年筆を使ったフォーマルな手紙が、デジタルの時代にもしっかりと認知され重みをもって存在している。また欧米では、日本の和紙が正式な紙として認知されているように、コットンペーパーが歴史も古く正式な紙として使われている。さらに印刷加工も伝統的な活版印刷や彫刻版を使った印刷が紙の良さやデザインを引き立たせるのに効果的と評価されていた。
「何より、大切な人に出す手紙には良い紙を使うということが相手に対する思いやりであり、マナーであるという考えこそ成熟した文化であるということを再認識しました。よし、消耗品ではなく文化を支える商品を作ろう、これがハグルマ封筒の目標になりました」杉浦さんはこう強調した。

こうした大戦略のもと、「ウイングド・ウィール」がオープンする。
まずターゲットを個人市場に定めた。
「個人は領収書の必要な法人とは異なり趣味嗜好性の強い顧客が多いという判断からでした。それまでハグルマ封筒には関西の法人顧客が多かったのであえて対極の東京・表参道からスタートしました」
時はちょうどオリジナル結婚式のブーム。レストランで手作りの結婚式を挙げたいといったこだわり客に、手作りの招待状は欠かせなかった。
ネットはもちろん、とくに宣伝をしなくても客が客を呼び、以後10年以上を経て着実に売り上げを伸ばしてきた。
ここでの成果をもとに、「ハグルマ封筒」は主要顧客である法人市場に向けてのブランド戦略にもいよいよ乗り出す。
「外資系企業やレストラン、美容室、個人事業主の方々はダイレクトメールや招待状にする便箋や封筒には高いデザイン性や品質が求められることをよく認識されています。そんな需要を満たす封筒メーカーは日本にはあまり多くはなかったのです。法人向け直営サイトをオープンしたところ大きな反響をいただいています。ただ単にお洒落なものというのではなく、世界標準のクォリティを安心してオーダーできるということが法人顧客には大切な視点だと考えています」

個人向けと考えて作った「ウイングド・ウィール」だが、そこにはビジネス用にセンスのいい封筒をつくりたいという顧客もかなり含まれていた。個人も法人も実は商品を選ぶ目線はそれほど変わっているわけではない。個人的に見つけた商品でも気に入れば仕事でも応用できないかと考えるのは当然だし、あの商品を作るセンスならばビジネスユースも作れるに違いないと想像するのも当然のことだろう。
「センスがいいから必ず価格は高いというのではビジネスではありません。たとえ安い封筒でも、素材価格を抑えてセンスで勝負する、こんな期待にも応えていきたいと思います」
杉浦さんはブランド化戦略に自信を示す。

デフレで高いものは売れない、封筒産業は袋小路、という業界の常識を覆す「ハグルマ封筒」の「非常識への挑戦」。
それは埋もれた潜在需要の発掘と提案から始まったのである。

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