「西村晃のマーケティングの達人 大繁盛の法則」企業経営・売上アップのヒントを提供

テーマ別企業紹介

大型ショッピングセンターやドラッグチェーンに対応する地域密着経営

佐賀市の郊外、ロードサイドに位置する。単店ながら独自商品を開発したり、さまざまなアイデア経営を繰り広げ、大型ショッピングセンターやドラッグチェーンに挑むドンキー薬局に、小売店の生き残りの処方箋を見る。

ドンキー薬局

日曜日朝。
佐賀市郊外にある「ドンキー薬局」の外には行列ができる。
日頃1リットル10円で販売している活性化水素水が日曜日午前中は6リットルまで無料になるからだ。
「自転車やクルマでかなり遠くからもいらっしゃるんです。ガソリン代のほうが高くつくと思うのに口コミでドンキーのお水はいいと聞いて来てくださるようです。お客様どうしが話し合い、当番まで決めて行列整理などをしてくださるんです」オーナーの宮地キクヨさんはこう話す。

多くの固定客に囲まれている宮地さんだが、2003年に店と通りを挟んだ向かいに大型ショッピングセンターが開業した時は厳しい表情だった。
「洗剤やシャンプーなどはあちらの方が大量仕入だから安いですし、専門店街には薬局や化粧品店も入っています。よりによってうちの真ん前になんでそんなものができるんだと、当時は途方にくれていました」
それだけではない。「ドンキー薬局」が面している佐賀市環状バイパスが整備されるに伴って道沿いにはドラッグストアもあちこちに出店、競争は一段と激化していた。

こうした中で「ドンキー薬局」はいかに安売りとは違う魅力を出してゆくかを考えて臨戦体制を整えた。
まず利益率が高く固定客比率も高い化粧品の対面販売を重視した。
自社社員の育成はもちろんメーカーからも派遣社員の応援を得て、ひとりのお客さんの接客に時間をかける販売に力を入れた。
次に「オリジナリティの深化」を徹底した。
「ドンキーオリジナル商品」の開発である。
地元の酪農家とくんでヨーグルトなど乳製品を売りだしたり、宮地オーナー自身が東京のとげぬき地蔵通り商店街で見つけた五本指靴下をヒントに、靴下メーカーにドンキーオリジナル五本指靴下を作ってもらったりと、「ドンキーにしかない商品」を大量に陳列して一気に人気商品にしてきた。
「最近ではさらに進化させて、佐賀県産のミカンや甘夏と酢をブレンドした5倍希釈飲料、『まごころ酢』をメーカーに開発してもらい美しく健康に適した飲料として販売を開始しました。また地元のメーカーに開発してもらった婦人用の補正下着も販売します」
地方で1店だけを経営する薬局がこんなオリジナル商品を次々に開発提案して販売すること自体、極めてまれなケースだと思う。

これだけにとどまらない。
店頭スペースを中心に「ドンキー薬局」の店内を注意深く見てみると、たとえ大手の製薬メーカーの商品でも、よその店ではあまり見かけないような商品が「一等地」にどんと積んであったり、POPをつけて大規模販促をかけていたりと、商品構成に特徴を出していることに気がつく。
ドリンク剤で大々的な積み上げ陳列をしてある「プラセントップ」は全国一の売り上げを誇る。また「リポビタン・ゴールドマクシオ」も大正製薬の戦略商品だがこれも有数の売り上げだ。
このほかゼリア新薬の「コンドロイチンシリーズ」は九州一、資生堂の専門店ブランド「クレ・ド・ポーボーテ」や「マキアージュ」も佐賀県一、取り扱い開始から間がないカネボウの化粧品「トワニー」なども伸び率で九州一など、どのメーカー側も大喜びする成績を上げている。
「お向かいのショッピングセンターができる前の売り上げがピークで、一度落ち込みながらもそのレベルまで取り返してきました。それ以上に化粧品・調剤など重点商品に絞った販促で利益率が高まったことが大きな収穫でした」
宮地さんは語る。
「大手とは違う地元のお客様を大切にする経営姿勢を徹底することが大切だと、学習しました。お客様の顔をみて営業することで価格競争とは違う生き残り方があるはずです」
その姿勢がよく表れているのが「ダイエット塾」だ。
おもに糖尿病の人などを対象にマンツーマンで食事療法を教えるダイエット塾を始め、これまでに延べ200人あまりが受講した。月に1回半年間のコースで入会金は3000円だが、半年で体重が一割減ると、ドンキー薬局での3000円お買い物券がご褒美として支給される。もちろん受講する人たちは「ドンキー薬局」のなじみ客だ。
商品提供だけでなく健康や美容に関する情報も提供する。
地域の情報ステーションという役割を心得た「ドンキー薬局」は、競争熾烈なドラッグストア業界における生き残りのお手本である。

オフィシャルサイトはこちら